こんにちは。今回は治療編 『アデノシン外用』について解説していきます。
何やら聞きなれませんが、推奨度Bということで選択肢になりうる治療法ですので、調べて分かりやすく解説していきます。
アデノシンとは?
アデノシンは生体内に普遍的に存在する物質の一つです。
生化学をかじったことがある方はご存じの通り、DNAの材料である『アデニン』と糖である『リボース』が結合した形をしています。
また、エネルギーの源であるATPはアデノシン三リン酸の略であり、アデノシンと3つのリン酸が結合した構造であり、アデノシンが生体で重要な要素であることがお判りいただけるかと思います。
アデノシンの作用機序 ~FGF-7の産生を促進~
アデノシンには次の3つの育毛効果があるとされています。
- 発毛促進因子FGF-7の産生により発毛促進
- 成長期を延ばし、髪を太く育てる
- 血行促進効果により毛根に栄養を届ける
FGF-7とは成長因子(Growth factor)という内因性タンパク質の一種。アデノシンは成長因子の産生促進によって薄毛を改善し、頭皮の血行改善効果もあるということです。
ミノキシジルは血行促進効果に加え、VEGF(血管内皮増殖因子)やKGF(角化細胞増殖因子)などの成長因子の産生促進作用があるとされているので、アデノシンはミノキシジルに類似した作用機序をもつと言っていいかもしれません。
大きな違いは、働きかける成長因子の違いですね。
アデノシンが作用するFGF-7という成長因子は、ケラチノサイト増殖因子(KGF)とも呼ばれるもの。成長期の毛乳頭細胞から産生され、毛母細胞に働きかけることから発毛促進に関わるとされています。
徳島大学と資生堂の共同研究によると、AGAの男性の薄毛部分にある毛乳頭細胞ではFGF-7遺伝子の発現量が半分ほどに減少しているとのこと。
そして、アデノシンは毛乳頭細胞のA2b受容体を刺激してFGF-7の産生を促進する作用があることも明らかにされています。
ヒト毛乳頭細胞におけるアデノシンの線維芽細胞増殖因子-7亢進作用はcAMPを介する
以上のように、アデノシンは発毛促進因子FGF-7によって薄毛を改善する効果があると考えられています。臨床成績だけでなく、生化学的な裏付けもあるので、割りと納得して使える育毛成分だと思います
アデノシン外用の有効性
ガイドラインには、幾つか臨床試験が紹介されています。(男女ともにエビデンスがあります)
① 0.75%アデノシン配合ローションを用いた、101 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月間のランダム化比較試験において、毛髪径・軟毛率・太毛率の中等度改善以上の改善率は、アデノシン配合ローション群は51名中41名(80.4%),対照群は 50 名中 16 名(32.0%)でした。
② 0.75%アデノシン配合ローションを用いた、38 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月間のラ
ンダム化比較試験において、アデノシン配合ローション群では対照群と比較して、毛髪径 40 μm 未満の軟毛率が有意に減少(P=0.0154)、毛髪径 60 μm 以上の太毛率が有意に増加(P<0.0001)、さらには頭髪の密度も有意に増加していた(P=0.0470)。という結果であったようです。
③ 女性型脱毛症に関して、0.75%アデノシン配合ローションを用いた、30 名の女性被験者を対象とし
た観察期間 12 カ月間のランダム化比較試験において、成長期毛伸長率と太毛率は,アデノシン含有ローション群で軽度改善以上が 13 名中 11 名(85%)であり、プラセボ群の 14 名中 5 名(36%)に比較して有意に改善度が増加していました。成長期毛伸長率と毛髪径 80 μm以上の太毛率は、使用 6 カ月後、12 カ月後の時点で、アデノシン含有ローション群で有意に増加していました。
アデノシン外用の副作用
一般的に、アデノシン外用薬は比較的安全で、重大な副作用はまれです。しかし、頭皮のかゆみ、刺激、発赤などの軽度の皮膚刺激が報告されることがあります。アレルギー反応が現れることもあるため、使用前に医師と相談することが重要です。
まとめ
アデノシン外用のガイドラインでの位置づけは、B(男性型脱毛症)、C1(女性型脱毛症)となっています。
AGAのクリニックでは副作用が少ないという点からも、Ⅱ型5α-還元酵素阻害にプラスして使用する選択肢があるのだと思います。
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