【薬剤師が分かりやすく解説】AGA ガイドライン ~治療編~ フィナステリド

ブログ

今回から治療編の各論です。

第1回は『フィナステリド』についてご紹介します。

簡単にどんな薬かを表でご紹介します。

一般名フィナステリド
先発品名プロペシア錠(販売:オルガノン株式会社)
後発品あり(日本では11社発売)
剤型飲み薬(錠剤)
使用方法  男性成人には、通常、フィナステリドとして0.2mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて適宜増量できるが、1日1mgを上限とする。
作用機序Ⅱ型5α-還元酵素阻害
副作用性機能障害、肝機能障害 等
購入方法医療機関での処方(医師診察後)
個人輸入(あまりお勧めできませんが)
※自由診療に該当するため、金額は医療機関や購入方法によって異なる。

詳しくご紹介していきます。

フィナステリドとは

フィナステリドは、日本では2005年にMSDから発売になった医薬品(プロペシア錠)です。現在はオルガノン株式会社というMSDの分社が販売しています。

爆笑問題が出演していた『お医者さんに相談だ♪』のCMのスポンサーはMSDでしたので、この薬があったからCMを放送していたのですね。

現在、日本では先発品の『プロペシア』だけではなく、後発品が11社から発売されています。

当然、先発品より安価で手に入れることができますし、取り扱っている医療機関は多いです。

小ネタですが、もともとフィナステリドは『前立腺肥大症』という病気の治療薬として開発されたみたいです。この病気は膀胱付近の前立腺という臓器が、文字通り大きくなる疾患で、尿が出にくくなるなどの症状が起きる男性特有の病気です。原因は男性ホルモンが関わっていることが知られており、フィナステリドも前立腺肥大症の治療薬として生まれました。

その後の研究で、フィナステリドは髪の成長を促進することが分かり、AGAの治療薬として広く使われることになりました。

使用方法

フィナステリドは飲み薬(錠剤)です。

具体的な用法用量は、『男性成人には、通常、フィナステリドとして0.2mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて適宜増量できるが、1日1mgを上限とする。』引用:添付文書

となっております。

用量を調整ができる薬剤という事で、効果や副作用を鑑みて飲む量を決めていかないといけないので、軌道に乗るまでは医師と一緒に治療を進めていくことが無難ですね。

作用機序

フィナステリドは『Ⅱ型5α-還元酵素』を阻害して効果を発揮します。

と言ってもなんだそりゃって感じですよね。

実はもう既に【疫学編】、【病態編】で説明しています。

『テストステロン』は髪の毛の根本の細胞(毛乳頭細胞)に運ばれると、『Ⅱ型5α-還元酵素阻害』の働きによって、より活性が強い『ジヒドロテストステロン』に変換され、脱毛サイクルの短縮をするんでしたね。(下図)

では、この『Ⅱ型5α-還元酵素阻害』を抑えることができれば、脱毛サイクルの短縮を抑えることができますよね?

そこで登場したのが『フィナステリド』です。

『フィナステリド』は『Ⅱ型5α-還元酵素阻害』を阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロン変換を抑えます。そのことで脱毛サイクル短縮を抑制します。(下図)

『何でその病気が進行するか?』が分かれば、『薬がどこに作用するのか?』が理解できます。

分からなくなったら一度今根本に立ち返ると理解できますね。

効果

臨床試験のデータや複数の臨床試験を統合したデータが『有効性』の根拠になっています。

ガイドラインの記載を抜粋してご紹介します。

① 3,927名の男性被験者を対象とした観察期間 12 カ月~24 カ月以上のシステマティック・レビューにおいて,脱毛部 1 cm2 あたりの硬毛数は投与 6 カ月後(p<0.001),投与 24 カ月後(p<0.001)のいずれの時点でもフィナステリド投与群がプラセボ群より有意に増加していた。  引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20956649/

② 「日本人」男性被験者を対象とした観察研究において,フィナステリド(1 mg/日)5 年間の内服継続により写真評価において効果が 99.4%の症例で得られた。   引用:https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.11477/mf.1412100928

①に書いてあるシステマティック・レビューは複数の臨床試験を統合したデータであり、エビデンスレベルが一番高い情報という事になります。

②では日本人での効果も確認されており、それを根拠に日本の医療機関での取り扱いが可能となっています。

副作用

副作用については、プロペシア添付文書とガイドラインをもとに書いていきます。

①性機能障害

フィナステリドは男性ホルモンに関する薬剤であるため、性機能障害をきたす事は想像しやすいのではないでしょうか。

実際に『リビドー(性欲)減退』や『勃起不全』は確認されています。

下の図は国内で実施した臨床試験の副作用のデータです。全体の副作用と性機能に関する副作用が分かれています。

引用:リブラクリニックHP

ご覧のように、フィナステリドを服用している方に数%性機能に関する副作用が起きています。

一方、プラセボに関しても同程度の副作用が発生しており、統計学的に有意な差はありませんでした。

ですが、副作用として発現している事は確かですので、そこは理解したうえで服用した方が良いですね。

②肝機能障害

添付文書には、『重篤な副作用』として肝機能障害が載っています。原因も頻度不明です。

また、『特定の背景を有する患者に関する注意』に肝機能障害患者と記載があります。

フィナステリドは肝臓で代謝され、体外へ排出される薬剤ですので、肝機能が落ちている方ですと特に注意が必要ですね。

まとめ

今回はフィナステリドについて解説してきました。

内容は『フィナステリドとは』『使用方法』『作用機序』『効果』 『副作用』についてでした。

書いていて思ったのですがフィナステリドは、

・用量調節が必要な薬剤

・副作用が発現する可能性がある(特に肝機能が低い方)

であるため、治療される場合は初めは医療機関に受診して治療を始めることが無難なのかなと思いました。

私も受診したことはありませんが、追々良い先生を見つけて皆様にもご紹介できたらいいなと思っております。

今後ともよろしくお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました