本日は『デュタステリド』について解説をしていきます。
『デュタステリド』のイメージは前回ご紹介した『フィナステリド』の強化版だと思っていただければわかりやすいと思います。
それでは前回同様、概要からご紹介します。
一般名 | デュタステリド |
先発品名 | ザガーロ錠(販売:GSK) |
後発品 | あり |
剤型 | 飲み薬(カプセル) |
使用方法 | 男性成人には、通常、デュタステリドとして0.1mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて0.5mgを1日1回経口投与する。 |
作用機序 | Ⅰ型/Ⅱ型5α-還元酵素阻害 |
副作用 | 性機能障害、肝機能障害 等 |
購入方法 | 医療機関での処方(医師診察後) 個人輸入(あまりお勧めできませんが) ※自由診療に該当するため、金額は医療機関や購入方法によって異なる。 |
ざっとこんな感じです。フィナステリドと同じ部分も多いです。
それでは詳しくご紹介をしていきます。
デュタステリドとは
日本では2009年に『前立腺肥大症』の治療薬として承認。
その後、2015年に『男性型脱毛症』の治療薬として承認されました。
どちらの治療も同じ有効成分(デュタステリド)を含みますが、商品名が下記のように異なっています。
前立腺肥大症治療薬⇒アボルブ
男性型脱毛症治療薬⇒ザガーロ
※既に後発品が発売となっているため、商品名を覚える必要はありませんが念のため
AGAガイドラインでは推奨グレード【A】ということで、一番高いレベルの推奨がされています。
使用方法
デュタステリドは飲み薬(カプセル剤)です。
具体的な用法用量は、『男性成人には、通常、デュタステリドとして0.1mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて0.5mgを1日1回経口投与する。』引用:添付文書
となっております。
フィナステリドと同様に、用量が調整できる薬剤となっていますので、軌道に乗るまでは医師と一緒に治療を進めていくことが無難ですね。
作用機序
デュタステリドは5α-還元酵素を阻害することで男性型脱毛に効果があります。
では、フィナステリドと何が違うのでしょうか?
フィナステリドは『Ⅱ型5α-還元酵素』を阻害する薬でした。
一方、デュタステリドは『Ⅰ型/Ⅱ型5α-還元酵素』を阻害します。
要するにデュタステリドの方が阻害できる幅が広いのです。
因みに、Ⅰ型は全身の毛の毛乳頭細胞にありますが、Ⅱ型は男性ホルモン作用を強く受ける髭や前頭~頭頂毛の毛乳頭細胞に分布します。(引用:アデランスHP)
ですので、AGA治療において主要な酵素はⅡ型ですが、頭皮の毛乳頭細胞にもⅠ型はありますので、そこも一緒に抑えることができるのがデュタステリドです。
また、デュタステリドとフィナステリドは両方とも、Ⅱ型5α-還元酵素を阻害しますが、その活性の強さもデュタステリドの方が約3高いと言われています。(阻害作用が約3倍という事で、発毛や脱毛防止効果が約3倍という事ではありません。)
効果
臨床試験のデータや複数の臨床試験を統合したデータが『有効性』の根拠になっています。
ガイドラインの記載を抜粋してご紹介します。
① 4,950 名の男性被験者を対象とした観察期間 6~60 カ月のシステマティック・レビューにおいて,頭髪写真評価で毛量増加を示した被験者比率を比較したところ,デュタステリド 0.5 mg/日内服群はプラセボ群に対して優れた効果を示した 引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23768246/
② 症例数が最も多い本邦を含めた国際臨床試験37)で,デュタステリド 0.5 mg/日とフィナステリド1 mg/日を用いた,917名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月のランダム化比較試験において,全毛髪数と毛直径の増加についてはデュタステリドの方が優れた効果を示したが,直径 60 μm 以上の硬毛数では両者間に有意な差がなかった.引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24411083/
ガイドラインには、という記載があります。
①では『プラセボ(有効成分が入っていない偽物の薬)』と『デュタステリド』を比較しており、効果が確認されています。
②では、当時既にAGA治療薬として使用されていた『フィナステリド』と新しい候補として出てきた『デュタステリド』がどちらが優れているかを検討しています。
結果、毛髪数と毛直径については『デュタステリド』が優れていましたが、直径 60 μm 以上の硬毛数では二剤に違いはなかった。という結果でした。
完全にデュタステリドの方が優れていると言えない結果であったため、フィナステリドとデュタステリドの両方ともにガイドラインでは推奨度Aが付いています。
副作用
続いて副作用です。
先発品ザガーロの添付文書に基づいて書いていきます。
①性機能障害
フィナステリドと同様『性機能障害』がみられる可能性があります。
しかも、添付文書には1%以上の欄に記載があります。
臨床試験の結果を見てみると、20~50歳の日本人男性型脱毛症患者120例を対象とした臨床試験(1年間内服)において、勃起不全13例(10.8%)、リビドー減退10例(8.3%)、射精障害5 例(4.2%)の発現が確認されました。
フィナステリドの臨床試験ですと、性機能障害は2.9%(かつプラセボと有意な差はなし)であったことを考えると、やはり作用が強いと考えられる一方、副作用も強いのではないかというイメージになります。(明確にどちらの方がというには、正式に臨床試験をしないといけないので、なんとも言えないところではありますが・・・)
②肝機能障害
こちらは添付文書の『重篤な有害事象』の項に記載があります。
発生頻度や発生機序は不明です。(臨床試験の結果を見ると1%未満)
フィナステリドと同様にデュタステリドも肝臓で代謝される薬剤で、肝臓に負担をかけることは間違いありません。ですので、肝臓の機能が弱っている方は注意が必要です。
③その他有害事象
用途が異なりますので、明確なことが言えませんが、前立腺肥大症治療薬のアボルブ(有効成分はデュタステリド)では他に、乳房障害、倦怠感、浮動性めまい等の記載がありましたので、デュタステリド内服で起こる可能性はありそうです。
まとめ
今回はデュタステリドの『概要』、『使用方法』、『作用機序』、『効果』、『まとめ』について書いてきました。フィナステリドと同様に、ガイドラインで推奨度Aに位置付けられている薬剤ですので、是非覚えておいてください。
フィナステリドと同じ内容になりますが、デュタステリドも『用量調整が必要』、『重大な副作用の可能性がある』薬剤になりますので、治療初期は専門のクリニックに通うことが無難だと思います。
また、フィナステリドを選ぶべきか?デュタステリドを選ぶべきか?、これは個人ではなかなか判断できないところだと思います。
以上が今回の内容になります。
次回は『ミノキシジル(外用)』を取り上げます。
引き続きよろしくお願い致します。
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